第849夜で、高橋美恵子さんのキン型こけしを紹介したところ、その初挽き独楽(57年12月13日作)についてコメントを頂いた。美恵子さんは昭和57年から自挽き描彩のこけしを作成していたようであったが、今一つはっきりしなかった。手元に胴底に日付を記入した美恵子こけしがあり、初作周辺のこけしらしいと思っていたので、今夜はそれを紹介したいと思う。口絵写真は「初作」と記入された美恵子こけしの表情である。
写真(2)(3)に美恵子さんの初作周辺のこけしと胴底の署名を示す。右から、2寸4分(初作、十八日、美恵子」、3寸4分(十二月十九日、美恵子)、2寸8分(十二月二十四日、美恵子)。この底の署名通りとすれば、美恵子さんの初作は昭和57年12月18日で、それが右端のこけし。真ん中のこけしが、その翌日作。左端は5日後のこけしということになり、初作から一週間以内の3本ということになる。独楽の初作が12月13日であり、それから5日後にこけしの初作が作られたということだろう。
写真(4)には翌58年のこけしも示す。右から3本は写真(2)のこけしで、4本目は4寸(58.1.22)、5本目は4寸9分(58.4 原の町)、左端は5寸(58.10.16 日野)。いずれも作り付である。初作は、また眉・目・鼻の描線がぎこちないが、日が経つにつれて手慣れていくのが見てとれる。最初は赤・黄・緑のロクロ線だけだった胴模様も、10か月後には花模様を描くまでに上達している。