Quantcast
Channel: こけし千夜一夜物語
Viewing all articles
Browse latest Browse all 223

第888夜:鈴木征一の初期作

$
0
0

Seiichi_s52_kao12月も1/3を過ぎ、今年も残り20日余りとなった。第3次こけしブームなどと言われる昨今であるが、この年末・年始に東京近辺のデパート等でこけしの展示・即売会があるという話は聞かない。昭和40~50年代の第2次こけしブームの頃には、各デパートが競って展示・即売会を行い、多くの工人が実演のために上京したものであった。あの頃の狂信的な熱気はもう戻らないであろう。さて、今夜は友の会例会の抽選で入手した鈴木征一のこけしである。口絵写真はその表情アップ。

Seiichi_s52_3men

写真(2)が本項の征一のこけしで、大きさは7寸3分。通常良く目にする征一のこけしとは異なった雰囲気で、面描、胴模様とも手慣れた感じはしない。胴底には「52.7」の鉛筆書きがある。

鈴木征一は昭和19年の生まれ、昭和47年から奥山庫治について5年間の木地修業を行い、52年5月からこけしを発表したと「伝統こけしハンドブック」に記載されている。「52.7」は入手年月と考えられるので、このこけしは征一の極初期のこけしと思われる。通常、新人工人のこけしは師匠のこけしを真似たものになるのであるが、未だ手慣れていないこともあってか独特の雰囲気を持ったこけしとなることが多く、その辺りが初期こけしの魅力とも言えるだろう。本作でも、両目が真ん中に寄って肘折らしいややグロテスクな味わいが感じられる。胴模様の重ね菊もぎこちないが、それが稚拙の美を醸し出しているとも言える。

Seiichi_s52_hikaku
写真(3)左は昭和30年前後の喜代治のこけし。表情、胴模様とも師匠の庫治よりも喜代治の俤を髣髴させるこけしになっている。ただ、この雰囲気のこけしは長くは続かなかったようだ。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 223

Trending Articles