今夜もヤフオクで入手した橘コレクションのこけしの話である。鈴木安太郎のこけしであるが、前回(874夜)紹介したものよりも先に出品されていたものである。安太郎の昭和13年代のものと思われ入手した。その後、874夜の安太郎が出品されたために2本とも我がコレクションに集まったものである。口絵写真は、その安太郎こけしの表情である。
写真(2)が本項のこけしで大きさは1尺2寸2分。頭がかなり大きく迫力がある。安太郎のこけしは頭の大きさと胴の太さがそれ程変わらないものが多いが、大寸物では頭が大きくなる。それでもこれほどの巨頭は初めて見た。小林倉吉の古作にも巨頭のものがあり、山形系の伝統なのかも知れない。大きな頭は横広ぎみで丸みがあり、面描、鬢の描法も874夜の安太郎と似ており、昭和13年の作と思われる。左目の目頭がぼやけているため、精悍な表情ではなく、とぼけた表情になっている。
なお、このこけしは文献で紹介されたものではないが、胴底に橘コレクションのラベルの痕跡がある。一方、胴裏下部には「天江富弥」と思しき書き込みがあり(写真(3))、天江コレクションから橘コレクション」に入ったものかもしれない。天江コレクションの安太郎こけしは「図譜『こけし這子』の世界」の85頁に2本載っており、その解説では『昭和11年11月の作。復活初期のもの』と書かれている。
写真(3)(4)に戦前の安太郎こけしを並べて見た。右2本が昭和13年作、左2本が14年作と思われる。頭の形、面描、鬢の形などでその差違は分かり易い。