津軽系盛秀型の古型ロクロは私の好きなこけしの1つで機会ある毎に求めているが、恵介さんの古型ロクロでこれまでと異なるものがヤフオクに出ていたので、頑張って入手した。ロクロ線だけの単純な模様であっても、表情など細部には違いがあり、それを比べて鑑賞するのも楽しいものである。口絵写真は、その恵介古型ロクロの表情である。
写真(2)に、手元にある恵介古型ロクロ4種を並べて見た。左から2番目は第414夜で紹介したもので、2010.3/17作の十日月目。今回のこけし(右から2番目)は2010.11/14作のもので、左の3/17作と同様のものと思っていた。同じ十日月目であるが、今回の方が見開きが大きく豪快な表情なのが気に入った。ところで、こうして並べてみると、目以外にも異なる点が幾つかある。先ず、頬紅は右端のこけしと同様、下瞼から頬全体に塗られている。次に、胴のロクロ線である。これも右と同じく、赤、緑、紫の3色とも太線の上下に細線が引かれている。左の2本は赤のみ太線と細線の組み合わせがある。そして、頭頂部の中剃りは左2本は地の色のままであるが、右2本は赤で塗られている。但し、右端は中央の赤丸と黒髪の間に地色の隙間があるが、本項のこけしはそれがない。
従って、古型ロクロも目の描法は別にして、様式的には左2本のようなものと右2本のようなものに分かれることが分かる。恵介さんのこけしはロー引きをしないため、三色のロクロ線が木地に馴染んで鮮やかである。特にロクロ線だけのこけしは日焼けや色飛びがしないように気を付けたい。