昨10日は、東京こけし友の会の「こけし談話会」があった。「千夜一夜Ⅱ」が未だ始まっていないため<番外>として報告する。開始間際まで参加者が集まらず心配していたが、開始後に続々と増えて、21名を数える盛況となった。今回のテーマは弥治郎系の佐藤伝内の息子達(伝・伝喜・伝伍)のこけしである。伝内か?と思われる古作や伝喜の最古作なども集まって、ハイレベルの鑑賞・勉強会となった。この談話会は、普通ではとても見られない作品がテーマ別に多数集り、鑑賞眼を高めるには最適の機会なので、多くの方々の参加をお奨めする。口絵写真は、戦前の伝喜こけしの表情。
先ずは会場(挽物玩具ねぎし)の中を紹介しよう。
伝内のこけしは、昭和16年に本田鶴松の所で作った10本程が知られているだけ。今回、この伝内の作か?と思われる古作が持ち寄られた。胴裾の広がった弥治郎古来の木地形態、眉が太く気品のある表情などから、伝内だとしたら昭和16年作ではなく、もっと古い時代のものと思われる。
三男・伝喜の戦前作は3本集まった。伝喜に戦前最古作は「こけし這子の話」に載っている大小2本であるが、写真の左端は這子の作と同時代かと思われるもの。下目が可憐である。右端は戦前の代表作であろう。太いどっしりとした胴に面一杯に描かれた旭菊と正面菊が素晴らしい。胴裏にも同様の模様が描かれている。左端の下目とは対照的に顔上部に描かれた眉目が明るく凛々しい。
戦後の伝喜は昭和33年6月の復活作が有名であるが、実際には32年頃より作っていたようだ。写真の左端は32年作か。右2本(33年6月作)と比べると幾つかの点で違いがある。胴の肩はかなり角張っており、頭は横長の平頭。3山の半円形の前髪飾りは黒色で33年の赤色とは異なる。他にも、鬢の下部が尖った三角形であること、鬢飾りが耳状であることも違いである。