真夏を思わせる暑い日があっという間に変わり、日本列島は北海道を除き、一気に梅雨に突入した。梅雨とは言え、しとしとした降りではなく、各地で激しい雨に見舞われている。天候自体が変化の激しい時代になったのかも知れない。本ブログも更新が滞っており、訪問して下さる方々には申し訳ない限りである。鳴子好きの国恵にとって、個性豊かな戦前のこけしは魅力溢れるものであるが、保存状態なども考慮すると、なかなかこれといった1本に巡り会うことは少ない。万之丞のこけしもその1つであったが、ようやく満足出来るものを入手することが出来たので紹介したい。口絵写真は、その表情である。
写真(2)が本項のこけしで、大きさは1尺。前所有者の解説では万之丞の自挽きとのこと。何と言っても、大きな平頭が素晴らしい。大沼岩蔵系列のこけしの頭は蕪形が代表的なのであるが、万之丞(自挽)は丸頭が多いようだ。均整のとれた胴は上部に太い鉋溝が1本、下部には細い鉋溝が1本入っている。肩の山の盛り上がりは大き目であるが、後年のようなウテラカシ(ザラ挽き)やロクロ線も入っていない。大きな頭や無彩の肩の山など、岩蔵の古いこけしと相通じるものがある。胴模様も菊3輪とラフに描いた茎葉のみでゴテゴテしていないのが好ましい。このようなことから、昭和15年頃のものではないだろうか。万之丞は戦前は大物挽きが中心で、こけしの製作はそれほど多くなく、特に自挽のものは少ないと思われる。