昨夜は佐藤春二の豆こけしとエジコを紹介したが、今夜は春二の子持ちこけしを紹介しよう。春二は優れた木地技術から各種の細工物も作っている。子持ち・孫持ちなど、入れ子のこけしは多くの工人が作っているが、春二の子持ちは親こけしがドテラを着ていかにも母親らしく、また子こけしは眠り目で頭がまわり何とも愛らしい。この子持ちこけしは弟子の井上四郎・ゆき子からはるみへと引き継がれている。口絵写真は子のこけし。
写真(2)に春二の子持ちこけしを示す。大きさは親こけしが6寸4分で、子こけしが1寸8分。親こけしの木地は作り付けで、胴は中央部がやや膨らみ、そこで上下に分かれるようになっている。春二のこけしにしては珍しく、ロクロ線は頭頂部のみで、他の部分描彩は全て手描きである。赤いドテラには木地の地色を残した花模様を散らし、縁を紫色で締め、襟の両脇にはトレードマークの蝶が飛んでいる。子こけしは桃色の衣を纏い、前には旭菊を、後ろには蝶を配している。母親の赤、子供のピンクの色彩が妙である。写真(3)は親こけしを上下に分けたところ。お腹に入れた赤子を見守る母親の優しい眼差しが心を和ませる一品である。↧